ステレオヘッドホン「MDR-Z7」で聴いてみた最初の雑感。
・ハイレゾ音源も気軽に外で楽しめるインナーイヤーレシーバー「XBA-A2」
・インナーイヤーレシーバー「XBA-Z5」を使ってみた最初の雑感。
・外出のお供にも、部屋でじっくり聴くにも、快適にリスニングできるステレオヘッドホン「MDR-1A」の続き。
ヘッドホンの本質を追究した「MDR-1A」のさらなる上位モデルとして、大口径70mmHDドライバーユニットを搭載したステレオヘッドホン「MDR-Z7」。
ソニーストアで視聴した時、あの雑踏とした中でも明らかに流れている音楽に没頭できていたので、改めてじっくりと試せるのはとても楽しみ。
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●ステレオヘッドホン「MDR-Z7」の細部をチェックしてみよう。
ステレオヘッドホン「MDR-Z7」は、 画像付きの白いパッケージに収まっているけれど、もう明らかに巨大すぎる箱で中のドライバーの大きさを物語っている。
化粧箱のフタを開けると、「MDR-Z7」が収まっていて、右上にはシリアルナンバーの刻まれたプレートがある。シリアルナンバー入りは、インナーイヤーレシーバーの「XBA-Z5」と、この「MDR-Z7」だけ。
内容物をチェックしてみよう。「MDR-1A」本体に、3mのヘッドホンケーブルと、2mのバランス接続ケーブルの2本。そして、金メッキプラグアダプター(ステレオ標準プラグ⇔ステレオミニジャック)。
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「MDR-Z7」を手に取ると、巨大な肉厚のイヤーパッドが凄い。その理由は、低域4Hzから超高域100kHzまで再生可能にするという70mmというかなり大きなドライバーユニットを積んでいるためで、てっきり大きいと思っていた「MDR-1A」の40mmとは比べ物にならないほどに本気で大きい。
これだけの大きさがあると、耳の中に音を届けるヘッドホンではなくて、もはやスピーカーで聴いてる感覚になる。設計思想もそこにあるようで、音の波面が広く平らになるとスピーカーで音を聴いている時のような自然な響きを体験できるようになる。
直径70mmの「HD(HighDefinition)ドライバーユニット」は、振動板材料に、「MDR-1A」にも採用されている「液晶ポリマーフィルム振動板」に、アルミニウム薄膜をコーティングを施して、さらにクリアな中高音を再生を可能にしている。
振動板の大きさは、同じ音を出すにしても必要な振幅が小さくて済むため、入力信号に対して正確に音を鳴らせてより微小な音の再現性も上がる。
密閉型のハウジングはアルミ製で軽量かつ剛性が高く、そこに通気孔を設けて振動板の動作を最適化することで低域のリズムを正確に再現。
付け心地にも注力をはらわれていて、低反撥ウレタンフォームを立体的に縫製したイヤーパッドとイヤーパッドが内側に倒れ込む構造を採用。
イヤーパッドのウレタンフォームは厚みも大きさも最大級で、後頭部の下の隙間のできやすい部分までも完全にカバーする。
ヘッドホンを装着していてもハンガーは、独自構造の「インワードアクシスストラクチャー」で装着性を高めつつ、可動部にはシリコンリングを入れてメカノイズもしっかりと抑えている。
実際に付けてみると、ウレタンフォームが耳に吸い付くように柔らかくピッタリフィット。かつ耳に触れずにその外側を覆うように密閉される。気密性が非常に高く、音楽の世界に没入できるのはもちろん、中からの音漏れも防ぐと同時に、重低音に寄与してくれる。
ハンガー部には金属を採用して、左右の長さを調整しやすいようにメモリが刻まれている。さらにMADE IN JAPANと文字とシリアルナンバーが記されている。
そして、ヘッドバンドの外側には本革を採用しつつ、頭に触れる部分にはウレタンフォームとなっていて柔らかくて上下にあたる側圧も変わらずつけ心地は良好で、長時間装着していての負荷はかなり少ない。
外観的な質感は総じて高くてチープさのようなものは全くないので所有欲はかなり満たされる。
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ヘッドホンからのケーブルは左右の両出しタイプの脱着式で、不意に外れてしまう事はないようにねじ止め機構に。
3mのヘッドホンケーブルと、2mのバランス接続ケーブルの2つが付属していて、ポータブルヘッドホンアンプ「PHA-3」と組み合わせでも使える他、別売ケーブルを使用する事もできる。
ヘッドホンケーブルは、音の劣化を抑制するために中の銅線に銀めっき加工した「銀コートOFC」を採用、ケーブルを4芯構造にすることで、左右それぞれに独立したグラウンドケーブルを用意してクロストークを低減させる。
ヘッドホン部に接続する端子はステレオミニプラグがそれぞれ2本になっていて、コードには表面には細かい溝を入れてからみにくい構造に。
3mと非常に長いヘッドホンケーブルなので、再生プレーヤーからの取り回しはしやすく、コードに物が触れてもタッチノイズが入る事はない。
もう一本付属のヘッドホンケーブルは、バランス接続用のヘッドホンケーブルで、ポータブルヘッドホンアンプ「PHA-3」と組み合わせて使用する際に使う。
バランス接続では左右の音を完全に分離する事ができるので、より確実にクロストークを低減してノイズの少ない繊細な音が再現できる。
さらに別売で、KIMBER KABLE社のヘッドホンケーブル「MUC-B20BL1」へとさらなるステップアップもできる。
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●数日使ってみたステレオヘッドホン「MDR-Z7」の最初の雑感。
これだけ大きいサイズのヘッドホンとなるとほぼ室内使いがメインになる。その一つとしてかなり気に入っているのが、HDDオーディオプレーヤーシステム「HAP-S1」のヘッドホン出力から「MDR-Z7」をつないで聴くスタイル。
一般的にスピーカーから納得の行く音量でゆったりと聴ける環境があれば良いけれどなかなかそうもいかないというか、日本の居住環境だったり、何かと周囲の音が入ったりと理想の環境とは程遠い事が多い。そんな時こそ、ヘッドホンが威力を発揮するし、これさえあればシンプルにいつも同じリスニング環境で聴ける。
PCのHDDに貯まっている楽曲は、自動で「HAP-S1」のHDDに転送して蓄積、音楽を聴きたい時は「HAP-S1」だけを音楽ソースのプレーヤーとして使える。しかも、ジャケット写真もカラーで見えるし、音源の内容も見えるし、必要最低限の知りたい情報は視認できて、あとは音楽に没頭できるという意味ではかなり使い勝手が良い。
それを、あえてスピーカーではなくて、ステレオヘッドホンの「MDR-Z7」で聴く。
付属のヘッドホンケーブルは、3mもあるのでポータブル用としては長いけれど、据え置き型だと、ある程度身動きがとりやすくなるのでちょっと離れたソファに座っても難なく聴ける。
「MDR-Z7」の付け心地は、「MDR-1A」と同じく耳周辺に触れたイヤーパッドは柔らかくて、内側の径の中に耳全部がスッポリと耳が収まる。一番隙間のできやすい耳の後ろあたりもしっかりイヤーパッドが追従して密閉感は高くて装着感はとても心地良い。
ただ、全く外の音が聞こえなくなるという作りではなくて、ポートから音が入り込んでくるし、同じ理由で、聴いている音も外へ少し漏れているので、完全な遮音というものではない。
さて「MDR-Z7」で聴いてみる。
スペックの周波数帯域を見て高い周波数が出せるとうたっていたので高音部分がもっとキンキンと耳をついてくるイメージしていたけれど、当たりはきつくなくて自然に鳴っていて、それよりも、低域の下からこみ上げてくるような重厚感というか、圧倒的な量感が押し寄せてくる感覚が凄くて、しかも直接的に耳に音が入ってくるというよりは、離れた位置にあるスピーカーから音を聴いてるかのような伝わり方をしてくる。
最初は自分のよく聞く楽曲ばかりを聴いていて、その楽曲が低域を重視したものだった事もあって、低域の濃密度と広がりが強調されていて、高音部分がもうちょっと来てくれてもいいのにという感覚があった。その後、数日聴くにつれて自分がヘッドホンに慣れたのか、全域で濃密な音を楽しめるようになった。
次に、ここで満足してるといけないと思い、ちゃんと音を聞き分けようと、なるべく良い音を聴こうとハイレゾ音源をチョイスして視聴。その中で、とてもわかりやすかったのは、ライブレコーディングされたハイレゾ音源(DSD)の楽曲。
これらを聴くと、例えばボーカルの声の質や響きや余韻、ギターの弦の響きと細やかに震えて消えていく繊細な部分に気づける。それでいて高いキーも心地よく聴こえることと、弦を鳴らしたときの中高音の自然の聴こえ具合と、低音の震える音と力強さが迫ってくる広がり感がある。(その後に同じ楽曲を圧縮音源で聴いた時の落差がよくわかる。)
耳に装着するヘッドホンにもかかわらず、よりその場の雰囲気にいるような感覚に近づいて聴けるのが「MDR-Z7」の心地良いところのように思える。
先にも書いたように、さすがにこのヘッドホンは外に持ち出せなくはないけれども、かなり巨大なので荷物になってもいいぞという気合は必要。
それでも、せっかくのヘッドホンというスタイルだけに、ハイレゾ対応のウォークマンと組み合わせて最良の環境を構築して移動することは十分に可能。
「HAP-S1」のような据え置き機はなくても、ウォークマン「NW-ZX1」、「NW-Aシリーズ」に音源を貯めこんで「MDR-Z7」とつなげば、場所にとらわれずに、リビングでもトイレでも寝室でも書斎でも、家中どこにいても最良なリスニング環境にできるというのも魅力。
さらにポータブルヘッドホンアンプ「PHA-3」と組み合わせてバランス接続をして、”音の移動要塞”のようなの使い方もできるので、これも後に試してみよう。