自分専用という響きに誘われて。青山ヒアリングケアセンターでの、カスタムイヤホン”Just ear”の体験イベントレポートだよ。
ソニーのヘッドホン設計を手掛ける“耳型職人”こと松尾伴大さん直々に調整して出来上がる音質と、東京ヒアリングケアセンターの菅野聡さんによる補聴器で培った装着感とが組み合わさって出来上がるテーラーメイドの”Just ear”。
去年(2014年)8月に単身乗り込んで視聴させてもらったけれど、その時は松尾さん不在という事もあって、今回はせっかくなら気になってるけど一人で行くのはちょっとという奥ゆかしい皆達と一緒に体験してみたらいいかも?という事でまとまって押しかけてみた。
・Just ear ソニーエンジニアリング
・Just ear 製品情報 (東京ヒアリングケアセンター青山店)
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●”just ear”を聴きに東京ヒアリングケアセンター青山店に行こう。
”Just ear”を実際に視聴できる場所は、東京メトロ銀座線「外苑前」駅から、テクテク歩いて約2分ほどのところにある「東京ヒアリングケアセンター青山店」さん。
ヴァーナル・ブラザース株式会社
東京ヒアリングケアセンター青山店
住所:107-0061 東京都港区北青山2-9-15 三輪ビル1階
電話番号:03-3423-4133
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●”just ear”の開発秘話を松尾さんから聞く。
”Just ear”の試聴が出来るのはもちろん、この日は、松尾さん直々に”Just ear”の開発秘話が聞けた。
えぇ、見た目のとおりイケメンでクールな口調で淡々と話しているかとおもいきや、サラっとぶっちゃけトークが織り込まれるので聞き逃さないようにしないといけない。
そもそも、ソニーエンジニアリングという会社ってなんだい?というところからいくと、ソニーグループの商品設計専門の会社。
ソニー製品の設計もしつつ、独自の製品も携えるよーというところで、例えばダンス練習用のDVDプレーヤー「Dance Station(ダンスステーション)」とか、ライブ会場で無線で一斉に色を変えるペンライト「FreFlow(フリフラ)」とか。
・ソニーエンジニアリング株式会社|Sony Engineering Corporation
社員さんのほとんどが設計者という超特殊な会社で、その中のヘッドホン部門にいるのが松尾さん。
この迷惑なほどのイケメンっぷり。
この松尾さんが、とある2014年3月に以下のツイートをつぶやきますよ。
MDR- EX800ST/EX1000/MA900/1R/XBシリーズの音響設計を手掛けた私ですが、あなたのために世界に一台のヘッドホンをつくると言ったら どのくらいの方が興味があるでしょうか?RTの数次第では、本気で取り組みたいと思います。よろしくお願いいたします。
— 松尾伴大 (@bandai13) 2014, 3月 28
当時はもちろんソニー製のカスタムイヤホンもなく、MDR-EX1000やMDR-EX90のテイストがドストライクだった自分を含め松尾ファンたちのどよめきは凄くて1000RT越え!
で、そのリツイート結果を松尾さん上司に直訴。
製品化するのは、そうそう簡単なものじゃなくてものすごい苦労があったとはいえ、チャレンジが実を結んで”Just ear”が立ち上がったと。
そういう人、大好きですw “@kunkoku:こんにちはーw 個人的にMDR-EX1000が一番大好きですけど、もうぶっちゃけ高くてもいいので、究極のヘッドホンを期待して全力で待機してますw!”
— 松尾伴大 (@bandai13) 2014, 3月 31
見返していたら、その松尾さんのツイートにまんまとうれしかって自分がメンション飛ばしているのを発見…。
「高くてもいいから」とか平気で言ってる自分に恐怖した((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
基本構造は、13.5mmのダイナミック型ドライバーユニット1基とバランスド・アーマチュア型ドライバーユニット1基の2つの組み合わせ。
ドライバーユニットとバランスド・アーマチュアの特性を活かしながら、例えば重低音にとか、ボーカルを心地よく聴きたいといった好みの調整するのがフルカスタマイズする「XJE-MH1」。
お値段30万円(税別)のスペシャルコース。
金額だけを聞くと高いよ…と思うけど、最大のキモは、松尾さんと自分とで同じ楽曲を聴きながら、好みの音質へ調整をして完全に自分のためモデルにできるというところ。
ソニーエンジニアリングの松尾さんが自分のために時間を割いて、一緒に音楽を聴いて、自分のために調整してくれるとか、対費用効果を考えると通常ではまずありえない事だけに相当に価値があるものだとジワジワとわかってくる。
カスタムイヤホンというのは、もともと、使う人の耳の型をとってその人専用のイヤホンを作るという事から、プロの音楽の世界ではステージで音をモニタリングする際に使われたもので、それが一般層に広がってきたもの。
”Just ear”は、一般に購入できるカスタムイヤホンとしてまだ1年も経ってないにもかかわらず、矢野顕子さん、DEEN・池森秀一さん、クラムボン・ミトさん、糸井重里さん、高城剛さん、黒崎真音さん、早見沙織さん、他続々と著名な人たちの中でも愛用される方が増え続けている状態が今。
・Owner’s Voice:Just ear
・クラムボン・ミトに学ぶ、イヤホンの選び方。値段で何が変わる?
・アーティストに直撃取材! 楽曲作りに活用しているオーディオ製品、教えてください! 番外編 早見沙織 – アキバ総研
声優の早見沙織さんに至っては、ファンの人が早見さんの声が最高に聴こえるためのイヤホンを作って欲しいというところから始まって、それを知ったご本人がそのカスタマイズしたイヤホンを作るというまさに逆転現象が起きたそうで。
・早見沙織さんが、SONYのカスタムIEMを注文するまでの裏話 – Togetterまとめ
この”声優”、”アニメ”というキーワードをトリガーに、それまではおとなしかった数名のハートに火が着ついたようで、みんなして突如として質問攻め。
オレも「シャア(池田秀一さん)やアムロ(古谷徹さん)の声がTHE ORIGINでファーストガンダムの時の声とリンクできるイヤホン」とか、「アスナ(戸松遥さん)の声が最上に聴けるイヤホン」が欲しい!!
”ボーカルに特化した”とか”クラブサウンドに最適な”といった面でのポイントよりも、”自分の好きな○○さんが最上に聴けるイヤホン”のほうがカスタムイヤホンの真髄を表してるのかもしれないね。
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●自分しか装着できない自分専用の”just ear”。
もう8月からずーっと悩みまくって、当日もモンモンと悩んで、よーしじゃあ作るぞ!と決意。
が、しかし”Just ear”というカスタムイヤホンは、松尾さんの音質調整だけでは完成しないのだよ。
人の耳の形は千差万別、ひとそれぞれみんな違う。
なので、耳の型にピッタリとフィットする形状を作りあげないといけなくて、そこで東京ヒアリングケアセンターの菅野聡さんによる補聴器で培った技術が必要になる。
”Just ear”のボディは光で硬化する”硬い樹脂”で出来ていて、さらに最終的に耳に届く部分は”体温で柔らかくなる樹脂素材”という「ダブルレイヤーフィットシェル」。
これを作る作業が必要。
意を決っしたのでお願いして、早速菅野さんに耳のチェックから。
…
菅野さん「君国さん、耳最近はりきって掃除しましたよね?」
オレ「へっ?は、はい(・∀・)」
菅野さん「はりきりすぎて耳の中に傷できてカサブタが出来てしまってます。このまま作ると精度が落ちてしまうので後日にしましょう。」
オレ「エエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ(`;ω;´)」
ガッカリな空気を察してか、e-tanさんが「じゃあ僕、耳型作りますよー」と。(だから画像はe-tanさん)
耳の採取やダイナミック型ドライバーの配置などを含めた検証で使うのが、オーバーヘッドホンのような形をした複雑な器具で、シェルが耳にピッタリとジャストフィットするために、角度や深さを計測するというもの。
ものすっごい細かい。
カサブタでへこんだトコなんてちょいちょいっと修正してくれたらいいじゃんよーなんて事を心の中で思った事を全力で反省…。
※耳型をとるまえに耳掃除をしておきたい人は耳鼻科でやってもらうのがベストだそうです。もしくはそのまま掃除しなくても問題ないそうです。耳に傷つけるのが一番ダメと(;´∀`)
かれこれ耳のチェックから、調整、それから耳型をとるまでの所要時間は約40分。(状況によって前後します。)
耳の形を精密に型採りをするために海外から直輸入した高級シリコン素材から実際の耳の型をとったのがコレ。
道の内側の形は人それぞれ違っていて、耳の中まで音を届けるまでに外耳道に収まる部分(音導管部)までも追従することで、まさにジャストフィットなイヤホンになる。
ちなみに、こっちが完成品のひとつ。
この画像を見ただけでも、右と左の形状がまるっきり違うのがもうはっきりとわかる。
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●”just ear”でいろいろ試聴してみよう。
”Just ear”のヘッドホンとしては、松尾さんとの対話という至極の時が含まれたフルカスタマイズするイヤホン「XJE-MH1」で30万円(税別)と、あらかじめ音質をプリセットしたカスタムモデルのイヤホン「XJE-MH2」で20万円(税別)の2種類がある。
「XJE-MH2」は、あらかじめ広く好まれるとされる音質の中から、「Monitor(モニター)」、「Listening(リスニング)」、「Clubsound(クラブサウンド)」の3つのバリエーションがあるので、こっちからチョイスするのもアリ。
それから特別にJust ear パートナーショップ限定モデルとして用意してもらった「SSモデル」を加えてみんなで試聴したけど、みんなおもしろいほどに好みがわかれる。
バランスド・アーマチュア型ドライバーとダイナミック型ドライバーのつながりも自然で、というよりもそもそも違和感を感じることがまるでなく、かつて超ツボにハマったMDR-EX1000の心地よさそのままに洗練されて解像感と音の広がりが気持ちイイ!
自分としては、去年聴いた時はフラットですんなり心地よく聴ける「Monitor(モニター)」が好きかなーと思っていたところに、そこに高音と低音を盛り込んでメリハリ感の増した「SSモデル」がいいんじゃないかと。
このあたりから、どれがいいんだろう?と盛大にみんな悩みまくるのだけど、先に”Just ear沼”に ハマった先人から、「一度耳型を作っておけば型はずっと残ってるし、一つ作ってみてまた別のテイストのイヤホンも欲しくなったら、また作っ ちゃえばいいんですよ!」というありがたいお言葉をいただき、あぁ、どこかで皆がハマってる”カメラ沼”とか”レンズ沼”に似てるなーと思ったり。
松尾さんがセレクトの楽曲が入ってる試聴用のプレイヤー(ウォークマン「NW-ZX2」)でも聴くこともできるのだけど、その中に一つ宇多田ヒカルさんの「First Love」が入っていてこれがまたイイ!
松尾さん曰く、この宇多田ヒカルさんが「First Love」を歌っている時期というのがちょうど年齢的にも子供から大人にかわる絶妙な時の声で、調整によっては、幼い声にも大人の声に聴こえるほどにかわってくる事もあるそうで、これこそがカスタムイヤホンの個性でもあるし、自分のための1本を作る価値があるとも思える。
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予定時間を1時間もオーバーしてしまい、随分と長居してしまったけれど、ひとまず終了してみんな帰途に。
えぇここからが”Just ear沼”の入り口というか、帰りながら自分の使ってるイヤホンで聴いてると、「アレ?何かがえらく違う…」なんて事に気づいてしまう(;´∀`)
投資する金額が確かに今までかけていたイヤホンの金額とはかなり違うので悩むのは当然なんだけど、ひとつわかったことは、松尾さんが自分のために音質調整をしてくれて、菅野さんが耳の中に届けるまでのシェルの形状を調整してくれて、ダブルで完璧なまでに自分専用イヤホンができる。
いやー、これって今でこそ成立してるけど、これから先どんどん認知されていって受注が増加したら、納期がのびるだけじゃなくて、いつしか松尾さんと対面で作ってもらうなんてことができなくなるんじゃ?なんて心配をし始めると、余計に気になりまくる。
次回(2月)訪れるときは、しっかり自分の大好きな楽曲をしこたまウォークマンに入れ込んで次こそは作ってもらおう!耳掃除はせずにね!
・ウォークマン「NW-ZX2」専用、buzzhouse design.製レザーケース!
・“ウォークマン”「NW-ZX2」がやってきたので、まずは外観を中心にチェックしてみよう。
・ソニーストア大阪で、ハイレゾ対応ウォークマン「NW-ZX2」を触ってきた雑感(前編)
・ソニーストア大阪で、ハイレゾ対応ウォークマン「NW-ZX2」を触ってきた雑感(後編)