フルカーボンボディとなったフラッグシップモバイル「VAIO Z」レビュー。(その1)カーボンの特性を最大限に引き出す理想の筐体、外観。
正直なところ、もう心踊るようなVAIOは出てこないのかもしれない、という諦めの気持ちになっていた。
VAIO㈱に移り、2015年に発売された「VAIO Z」や「VAIO Z Canvas」は意欲的なモデルだったし、それから先に大いに期待をしたけれど後継機種は続かず。
法人向けにかじを切った路線のモデルとしての「VAIO S11/13」は、法人である必要要件に当てはまらないといけないという枷があるために冒険できないことも理解していた。
2016年に発売された「VAIO S11」は、先んじてThunderboltを搭載したかと思えば、またその後のモデルでは搭載せず。
「VAIO SX14/ SX12」では、狭ベゼルやType-Cを採用するなど実用性は前進したものの、他社が積極的に採用する新プロセッサーをはじめ新しいデバイスの採用する中では徐々に乖離がみられ。
直近の2020年後半モデルにいたっては、同じ第10世代Intel Core プロセッサー「Comet Lake」から「Ice Lake」へと変更するという迷走っぷりや、VAIO SX12のディスプレイの高解像度化もなく、両モデルともにディスプレイの色再現性を突き詰めるでもなく、USB-Cは一向にThunderboltに対応せず、かつてのVAIOに心躍っていた自分としてはガッカリは相当なものだった。
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目次
●5年ぶりに現れた新しい「VAIO Z」は、期待に足るマシンなのか?
その後2020年11月4日、VAIO㈱は、”挑戦に火をともそう デザインと技術で、世界中のイノベーションを加速する”
というブランドミッションを掲げる。
あ、これは何かあるな…と。
確たる道筋がないと、こうまで言い切れないはず。
冗談ぬきでスマートフォンで事足りることは多くて、Windows PCのアドバンテージはアウトプット効率に真価を問われる。
そこが本当にほしいと思えるPCになりうるかどうかのライン。
そこにようやくこのフラッグシップモバイル「VAIO Z」が登場。
今回の「VAIO Z」は、ノートPCの筐体の構成する本体からディスプレイにおよぶ全ての面をカーボンファイバーを採用する、フルカーボンボディ。
中身については、最新Intel製第11世代 Core Hプロセッサー(TDP 35W)、第4世代ハイスピードSSD、高精細な4K [HDR / DCI-P3] ディスプレイ、次世代大容量高速通信5G、・Thunderbolt™ 4対応 USB Type-C™ を2基備えるモンスターPCである。
価格をのぞけば、最強のWindows PCと言える。
VAIO㈱となって生産規模も小さくなってしまってからは、ソニー時代のように多様なモデルを出すことは難しこともわかってはいたけれど、業績が上向いているからこそ期待値の高いモデルを待望していただけにようやく溜飲が下がったというのが本音。
そもそもVAIOの中で、VAIO Zが今もなぜ待望されるかというと、その時その時のフラッグシップモバイルを体現していたから。
2008年に登場した「VAIO typeZ」はハイブリッドグラフィックスを搭載したし、2010年モデルのVAIO ZはクアッドSSDを搭載した、2011年モデルのVAIO Zは光ファイバー通信の外付けグラフィックスをやってのけたし、ソニーからVAIO㈱になってからも2015年モデルのVAIO Zは、Z Engineというハイパフォーマンスとタブレットを一体化するという進化と遂げてきた。
スタンダードなノートPCではなくて、現状を突き抜けるモデルだからこそ支持してきたし欲しくもなった。
何度も蒸し返すようだけれど、今から20年以上も前になる「VAIO 505」は当時採用されなかったマグネシウム合金を採用して軽量モバイルの革新を起こしたけれど、それもその時代の限界点がそこだった。
その後2003年には、ノートPCに世界で初めてカーボンファイバーを採用した「VAIO X505」が誕生。
それ以降、カーボンファイバーを採用したPCも増えてきたものの、軽量と剛性で突出する素材のカーボン素材の一番やっかいなのは成形技術。
カーボンファイバーはその素材の優位性はあっても、何しろ加工が難しすぎて利用できても板状の平面な部分のみ。
加工技術が進んだといっても、少し曲げることが精一杯。
あとはカーボンファイバーと強化プラスチックを混ぜ合わせるといった方法を組み合わせるなど。
ところが、今回の「VAIO Z」では、本体の主要部分を覆う面構造をカーボンファイバーにしました、ってどういう事?
これは今までのVAIOのカーボンボディの歴史からしても、大きな加工は無理なんだと十数年信じてきたのに青天の霹靂。
F1マシンやレーシングカーはたしかにカーボンファイバーを使って車体をモノコックボディ構造にしているのは知ってはいたけれど、そもそも大きさが違いすぎる。
そんなはるかに小さいノートPCでやるってどういう事なのかと。
想像するに、平面部分だけカーボンにしてあとは別の素材を組み合わせるほうがはるかに量産しやすいだろうしコストも下がるだろうになんて余計な心配をしてしまうけれど、VAIO㈱やりきっちゃったなと。
公式サイトの開発秘話を読んでみると、なんと「VAIO Z」のカーボンボディを作り上げるだけで、東レ(東京)、埼玉、静岡、大阪、長野という日本中のメーカーの力をあわせて出来上がっているというコスト度外視の製造方法だと知る。
あ、これ、お金かかるわ…。
<参照>
Vol.1 開発者が語る「立体成型フルカーボンボディ」
最近の新しいところでいえば、Appleが自前でM1プロセッサーを用意して、低価格帯にもかかわらず非常に高いパフォーマンスを出せるMacBookやMacminiを登場させて驚かせた。
これは一つのPCにある既成概念を壊してしまった例である。
「VAIO Z」は、言わずと知れたWindows PCのスタンダードを進むモデル。
もう誰もが息をするようにスマホは当たり前に手元にあるし、ガッツリPCゲーマーは自作でゴリゴリのPCを組むだろうし、キータイプするノートPCというポジションも限られる世の中になってきたのも事実。
けれども屋内外を問わず移動できる手段を持っていて、その限定されたサイズの中で最も生産性の高いノートPCは、仕事でも遊びでも欲するところの最先端でもある。
アルミ切削加工のカッコよさとは全く別の、全身をカーボンで包むフルカーボンボディというノートPC界のレーシングマシンがこの手にできる時が来たのである。
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●カーボンの特性を最大限に引き出す理想の筐体、フルカーボンボディ。
「VAIO Z」を初めて目にして手にとったときのストレートな感想は、こんなに薄くて軽いノートPCが本当にハイパフォーマンスなモデルなのか?という奇妙な感覚。
以前の2015年に登場した時の「VAIO Z(VJZ13A1)」は、性能がゆえにアルミとカーボンという組み合わせで、約1.34kgくらいの重量があるしガッシリしたイメージだった。
ところがこんなに華奢になってしまって大丈夫か?
そういう意味では、今回のフラッグシップモバイル「VAIO Z」は、全体をUDカーボンで覆って軽量化に務めた「VAIO Pro 13」に始まり現行モデルである「VAIO SX14」に近い。
そのため、なんだ「VAIO SX14」のバージョンアップ版か…と思ってしまいたくもなる。
おそらく写真ではわかりにくいのだけれども、この全身がフルカーボンファイバーになっていて、かつカーボンが立体的に曲面を描いているボディがなんとも艶めかしい。
ポエム的になりつつあるけれど、全体の手触りにしても、アルミ筐体に慣れているとどこを触ってもヒンヤリとしない温かみとしっとりとした手触りはもはや有機的。
それこそ今までのカーボンを採用したVAIOですら、ディスプレイ天板の平面な天面部分だけに一枚のカーボンファイバーを採用して、その他の周囲部分は樹脂素材で複雑な形状をまかなうというのが今までの構造だった。
まず、「VAIO Z」のディスプレイ天板は、カーボンファイバー製の天面の行く先はそこでとどまらず、そのまま両サイドに向かってコの字状に折り曲げられている。
そう、両端のベゼル部分までを一体成型してしまっている。
しかもベゼルの幅は極めて細く、ディスプレイの厚みも薄く、その線の頬さを保った液晶画面を強固に守る。
理論値を引き合いにだすと、従来パーツよりも断面二次モーメントを約400%向上しているとのことだ。
このディスプレイでチルトアップするVAIOノートにお約束の左右に渡る横長のオーナメントがない。
「VAIO SX14/ SX12」をみてもわかるとおり、アルミ製のオーナメントがある。
この役割はディスプレイ天板の強度を補強するため。
「VAIO Z」では、天面からなるカーボンがヒンジ部分までもV字型に折り曲げられて、一体化。
ここも相当な剛性を持っているのでもうオーナメントは不要になってしまって、デザイン性を担保するだけの両サイドにある部分のみとなってしまった。
もちろんシンプルな構造になったことで、奥行方向に小さくなり、当然ながら全体的な軽量化にもつながっている。
底面にカーボン素材が採用されることは今までもあったけれど、今まではあっても少しフチを曲げた程度だった、
いやそれが加工の限界だったから。
だがしかし「VAIO Z」の底面はシンプルな形状ではなくて、もう最終目的となる立体構造になっている。
特に、底面の後ろ面の角を見るとわかるとおりカーボンファイバーでこんな曲面が作れるのかと。
これはいわゆる金属成形で言うところの絞り加工(板状に圧力をかけて立体的に加工)にちかいもので、絞るというよりは引っ張られたカーボン繊維が芯材に沿って内側に入っていくという作り方。
カーボンファイバーでこれをやってるので筐体の剛性がものすごいことになる。
ということはイコール、本体内部に従来あった補強用のリブ(間仕切り)もそんなに必要なくなる。
リブ(間仕切り)が減るということは、内容物のスペースがしっかりと確保できることにもなるので、基板や放熱パーツのレイアウトもより自由度が増すというメリットもでてくる。
個人的にはこれに一番驚いた。
パームレストからキーボード面がカーボンファイバーの1枚板というだけではなくて、手前や左右側にも折り曲がった立体構造で、おそろしく剛性が高い。
手のひらをパームレストにのせてたらタワミがあるかな?と思ったけれどそれもなく、キータイプしていても打鍵感も心地よい。
いや、手の腹が冷たくないしシットリした感触が不思議でたまらない。
しかも使っていて手の腹の跡が残って、消さなきゃみたいなメンテナンスもないしノンストレス。ひさびさにタイピングが楽しい。
そうは言ってもね、全身カーボンファイバーになったって聞くと、本来カーボンファイバーはしなる素材であるしグネグネなるんじゃないの?
本当に強度は大丈夫なの?という不安もある。
残念ながら?閉じて振り回しているぶんにはなんの問題もあるはずもない。
ちなみに、VAIOロゴが小さくなっていて、これがまた非常にカッコ良い。
そんなに普段から開いたままでギリギリ端っこもってブンブン振り回すなんてことはしないけれど、実験的にはやっておかないといけない。
ということで、意地悪なくらいにパームレストの端をもって、フリまくってみた。
結果から言うと、さすがにしなる。
カーボンファイバー素材だから曲がらないわけはないのだけど、異常な曲がり方はしないので内部パーツに支障をきたすこともない。
人力でカーボンを一定異常曲げることすら不可能。
ちゃんと、1kgの重量を支える強固さもある。
このあたりは昔からVAIO社独自の品質試験を数多く行っていることもあって、その堅牢性も信用にもつながっている。
今回、VAIO社では新しく「MIL規格(MIL-STD-810H)に準拠した試験を追加で導入。
「90cm6方向落下試験」、「76cm 20方向落下試験」、「鉄板上落下試験」、「150kgf加圧振動」、「液晶ハウジング加圧試験」、「ペン挟み試験」、「本体ひねり試験」、「角衝撃試験」、「キーボード水かけ試験」まで行っている。
You Tubeでもアップされているので参考にみてみると良い。
今回使用しているのは、VAIO Z | SIGNATURE EDITION 特別カラーのシグネーチャーブラック。
いわゆるカーボンファイバーの目が見えるタイプのもの。
目の見えないブラックも選べる。
カーボンファイバーを扱い出したVAIOの伝統の限定カラーではあるけれど、今回はこれがディスプレイ天板だけではなくて、いつも見開いて目にはいるパームレストにもあるわけで、この特別感はかなりのもの。
Core i7-11375Hを搭載するスペシャルエディションだけに価格もドーンと上がるのだけど、VAIO Zを買うのに妥協はなしだ!と吹っ切って選ぶ価値はある。
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●14インチディスプレイをもつ「VAIO Z」と「VAIO SX14」の外観比較。
「VAIO Z」の外形寸法は、約 幅320.4mm×高さ12.2~16.9mm×奥行220.8mm。
本体質量は、カスタマイズによって異なる。
【ブラック+フルHD液晶】約958~1013g
【ブラック+4K液晶】約1002~1065g
【シグネチャーブラック+フルHD液晶】約982~1013g
【シグネチャーブラック+4K液晶】約1028~1065g
参考までに、同じ14インチのディスプレイサイズの「VAIO SX14」と、外形寸法と質量を比較。
VAIO SX14の外形寸法は、約幅320.4mm × 高さ15.0~17.9mm × 奥行222.7mm。
本体重量は、フルHD液晶&i5/i3 約999〜1018g
フルHD液晶&i7 約1015〜1025g
4K液晶選択時 約1028〜1045g
なんとハイパフォーマンスな「VAIO Z」のほうが「VAIO SX14」よりもわずかながらも小さく薄い。
35Wの強烈なプロセッサーやそれを冷却する2つのルファンを搭載しているので普通が巨大になって然り。逆転現象が起きている。
また、サイドの佇まいもまるで違ったものになっている。
法人向けとして意図的に端子を増やした「VAIO SX14」とは真逆に、Type-C端子2つとHDMI端子、マイク端子だけになったことで根本的にデザインが異なる。
「VAIO Z」のシグネチャーブラックであり、4K液晶ディスプレイをそなえるモデルを計量してみたところ、約1,017gだった。
5Gを搭載するとおそらくもう少し増えるだろう。
フルHD液晶とブラックカラーであれば最軽量約958gと1kgを切る。
参考までに、2015年モデルの「VAIO Z(VJZ13A1)」は約1,340gもあると考えると、300gにもなる重量の差はかなりのものである。
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●薄く軽いボディに、納得できるアウトプットパフォーマンスを持ち合わせているのか?
性能のためには多少の重量や厚みは致し方ないという概念を覆して、かつてのVAIOが高みを目指した”極限の薄さ”や”さらなる軽量化”を体現。
今まであったような区切りや凹凸が随分となくなり、カーボンの曲線で織りなされるフォルムは今までに観たことがない。
「シグネーチャーブラック」のカーボンファイバーの繊維の目と、しっとりとした手触りがこれまた金属ボディとはいい意味で全く異なる。
失礼ながら、VAIO㈱にここまでの突き抜けたものが作れるのか!?と驚きしかない。
さて、単純に全身カーボンファイバーになって薄くて軽いは正義ではあるけれど、果たしてPCの快適さとどうつながるのか?
ノートPCのスタンダードであり、基本普遍であるクラムシェルという形状で、納得できる感動ポイントがあるのか?
それを知ることが重要。
長いトンネルを抜けたのか、中身に納得できるまで徹底的に調べていこうと思う。
フルカーボンボディとなったフラッグシップモバイル「VAIO Z」レビュー。
・(その2)刷新されたプロセッサー、ストレージの性能を知る。待望のThunderbolt 4、高速通信5Gを搭載。
・(その3)待望の広色域4Kディスプレイ、「隠し刻印キーボード」バックライトの視認性、ストレスフリーのセキュアな認証。
・(その4)どれほどのパフォーマンスを持ち合わせているのか?既存VAIOノートとベンチマークテスト比較してみた。
・(その5)Thunderbolt 接続で、拡張ボックス+外部グラフィックボードを合体、超パワーアップ!これこそ漢のロマン!
へ続く。
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●フラッグシップモバイル「VAIO Z」
・ボディ覆う全てをカーボンファイバー採用、剛性と軽量を両立する最強フルカーボンボディ。
・質量、約958~1065g
・プロセッサーには、最新Intel製第11世代 Core Hプロセッサー(TDP 35W)搭載。
・メインメモリーに最大で大容量かつ高速対応のDDR4 最大32GB。
・ストレージは、第4世代ハイスピードSSDに突入!シーケンシャルリード6GB/s超え!
・次世代大容量高速通信5G搭載可能。
・高精細な4K [HDR / DCI-P3] ディスプレイを選択可能。
・180度開閉ディスプレイ。
・Thunderbolt™ 4対応 USB Type-C™ を2基搭載。
・webカメラ、マイク性能強化。
・キーボードは、日本語かな文字なし/あり、英字配列、隠し刻印、5種類から選択可能。
・2ボタン付き、面積を拡大したタッチパッド。
・小型大容量Type C ACアダプター。
・ドッキングステーションにより4K/60Hzを2台拡張、トリプル4Kが可能。
・人感センサー+顔認証、電源ボタン+指紋認証。
・VAIO Z | SIGNATURE EDITION 特別カラーのシグネーチャーブラック、Core i7-11375Hを搭載するスペシャルエディション
フラッグシップモバイル「VAIO Z」
VJZ1411
[14.0型ワイド液晶] カラー:ブラック
ソニーストア販売価格:237,000円+税~
フラッグシップモバイル「VAIO Z」SIGNATURE EDITION
VJZ1411」
[14.0型ワイド液晶] カラー:シグネーチャーブラック/ブラック
ソニーストア販売価格:322,000円+税~
・VAIO新生活応援 キャッシュバックキャンペーン(2021年2月18日~5月25日)
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●ソニーストア 直営店舗(銀座・札幌・名古屋・大阪・福岡天神)
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