「VAIO Prototype Tablet PC」、ソニーストア大阪トークショーレポート(前編)
ソニーストア 大阪で開催されている「ソニーストア 大阪10周年記念祭」のメインイベントのひとつとして、11月2日(日)に行われた「VAIO Prototype Tablet PC」トークショーに行ってきたその様子。
あまりにもインプットが多くて実機を触らせてもらいながらたくさんの話も聞けたのだけれど、それを織り交ぜて自分の意思を取り入れて書いてしまうと、トークショーの内容が歪曲するおそれがあるので、まず前編では冷静にトークショーを聞いたそのままの内容をレポートする。
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●ソニーストア 大阪 「VAIO Prototype Tablet PC」トークショー
2014年10月4日にロサンゼルスで開催された「Adobe MAX」に、突如出展されたVAIO㈱の開発段階のタブレットPCとして登場した「VAIO Prototype Tablet PC」。
いきなり海を渡ってしまって遠くの話のように思えてしまったけれど、ついに日本で初めて一般公開となったのがソニーストア大阪での「VAIO Prototype Tablet PC」トークショー。VAIO㈱の商品プロデュサー/商品企画担当ダイレクターの伊藤好文氏とフォトグラファー/レタッチャー御園生大地氏の両名によって「VAIO Prototype Tablet PC」について語られた。
トークショーは、13:00~14:00と15:30~16:30の2回行われて、それぞれ20席用意されていたけれどすぐに予約で満席。予約できなかった人たちは、その周囲から立ち見という形で参加できたのだけど、もうかなりの黒山の人だかりと化してしまっていた。
自分は立ち見で全然構わなかったので、2回ともトークショーに参加。2回も話を聞いたおかげで、聞き逃した内容もしっかり把握できたし、1回と2回で少し内容も変化して楽しめて、トークショー後のタッチアンドトライでは、開発のさらなる裏話を聞きながら実機を触る事ができたので想像以上に満足する事ができた。
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●VAIO商品プロデュサーの 「VAIO Prototype Tablet PC」開発秘話
まずは、伊東氏の開発秘話としてのセッション。伊藤氏は、SONY時代に、VAIO Pシリーズ、Zシリーズなど変態系といわれるキワモノなどの商品企画を担当。
まず一番最初にVAIOの試作機が触れられる事になったのは、5,000人以上が集まるロサンゼルスの「Adobe MAX」。
ここに参加される人たちはみな、$1,500、日本円で約15万円相当を支払ってまでも参加する人たちで、その一際シビアな要求を求めている”クリエイター”のひとたちにVAIO試作機を使ってもらって、手応えと今後の改善を確認する場として選ばれたのだという。
VAIO㈱は国内でVAIOを販売していくとしてたのに、どうしていきなり海外?と思っていたけれど、そういう理由だった。
そして、VAIO.comの[PHILOSOPHY] というページに”本質+α”の思想が書かれているけれど、そこの背景に映る画像は実は、「VAIO Prototype Tablet PC」だったとこのトークショーで初めて明かされる。
VAIO㈱設立当初から掲げられている”本質+α”とは何か、それを表すのはその言葉ではなくてメーカーとしてモノで語っていこうと、その思想を表すのが「VAIO Prototype Tablet PC」の姿となった。そしれは、例えるならば車メーカーのコンセプトカーに相当する。
コンセプトカーにレーシングドライバーが搭乗して走りを追求するように、これからのPCはどうあるべきかを突き詰めるためにコンセプトPCを開発して、限られた時間の中で物を生み出す事を課しているプロのクリエイターの人たちに使ってもらい、満足いくプロダクツを作り上げる。それは結果として、VAIOを使う全ての人に対して使い勝手の良い物ができると。
「VAIO Prototype Tablet PC」が生まれるきっかけになったのは、2012年11月に搭乗したVAIO Duo 11。
当初VAIO Duo 11は、Windows8登場と同時にタッチとペンでノート代わりに使えるよという事で作られたけれど、そのペンでの描き心地から想定外にイラストレーターに大きく注目されたことで、じゃあそのクリタイター(イラストレーター、デザイナー、フォトグラファー)の人たちのためにPCを開発。
特にプロのクリエイターが必要とするWindowsソフトとして、PhotoshopやIllustrator、PremiereProが非常に重要で、そのつながりからAdobeの開発チームやアーティストのフィードバックを反映させて、デスク以外の場所でもプロレベルの創作を支援できるマシンが形作られていく。
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●今までにないタブレット”THE MONSTER TABLET”
今やたくさんあるタブレットという形の中で、一際レベルの違う存在となるべくして、圧倒的なパフォーマンスを発揮する”Performance”と、高密度実装を詰め込んでいかにコンパクトに作るかという”Mobility”と、プロの創作活動に耐えうる満足できる”Creative UX”という3つのコンセプトを持つ”THE MONSTER TABLET”を作りあげる事になった。
”Performance”面では、Intelの最高性能のモバイル向けプラットフォームHプロセッサラインのクアッドコアプロセッサを採用。GPUにはIris Proを搭載。
そのパフォーマンスは、Adobe Photoshop Lightroom 5で100枚のRAW現像を印刷した場合には、Ultrabookに搭載されている15W Dual Coreプロセッサーとスコアを比較すると、約2.1倍早くなる。PhotoShop CS6でSmart sharpen filterを使用した場合では3.5倍速くなる。
こういった処理スピードは何かをつくろうとする時の時間に影響するため、制作する上での質にも影響する部分になるのでとても重要。
ストレージには、PCIeのハイスピードSSDを採用する事で、SATA SSDの約2倍の高速化でトータルのレスポンスもより速くなる。
例えば、Photoshopで大きいデータを自動でバックアップする場合でも仕事を止められてしまうという時間すら無駄にしたくない。あらゆる速さは創作活動を行う上で正義となる。
ディスプレイにも大きな拘りを持っていて、タテでも横でも使いやすく12.3インチというサイズに、デジタル一眼カメラで撮影した画像が全画面で見られるようにアスペクト比3:2を採用。さらに、Adobe RGBカバー率は95%以上、2,560×1,704(250DPI)という超高精細で、色の再現性はVAIO Tap 11よりもさらに上がっていて赤方向への発色が生き生きとして、写真を見てもよりリアルに美しく表現できる。
”Mobility”に関しては、開発段階という事もあって、サイズも質量も一切公表はされていないけれど、直に触る事を許されるのはトークショーに来た特権。
”Creative UX”では、創造するための使い勝手を追求。
レタッチをしたりやイラストを描く場合、ショートカットを多様する事も多いため、手前にある固定のキーボードではなく、サイドに補助的に配置して使えるというクリエイティブな使い方を考慮してのもの。
本体を保持するスタンドもただのスタンドではない。
一般的にこうしたスタンドは、角度を変更したい場合にはもう一方の手で支えながら調整する必要があるけれど、「VAIO Prototype Tablet PC」には、特許を持つ独自の機構(スプリング、ダンパー、カム)により、角度を変えると自動的にスタンドが追尾して、止めた場所でしっかりと止まるのでペン入力時でも倒れこむ事もない。自然が使い方が当たり前にできる。
モバイルできるサイズながらもインターフェースは非常に充実。
左から、ヘッドホンマイク端子、USB 3.0x2、SDカード(UHS-II)、Mini DisplayPort、HDMI 1.4出力、有線LANを搭載。
タブレット端末では非常に少ない端子類も、USBを2つ搭載していたり標準のSDカードしかも高速なスロットを備えたり、2つのディスプレイ出力は4K解像度の出力までが可能だったりと、ただ薄く作るだけでなく用途を考慮して作られている。
ペン入力は、ディスプレイにダイレクトボンディングを採用して視差を限りなく小さくすることで、まるで紙に描くような感覚で細かいところまで描ける。
ここで、実際にAdobe MAX会場で、メイクアップチャンピオンになった事のあるレイス・バード氏のライブデモを動画で紹介。たった30分で描きあげたイラストが紹介されたけれど、非常に緻密な描画が描けている事が開催現地でもとても評価されたという。
Hプロセッサーを搭載してデスクトップのパワーを外に持ち出せる、忠実な色が再現できることで印刷をして修正をしての繰り返しを減らせる、視差のないペンで直感的に描ける、自由な角度で自由な姿勢で描ける、それが「VAIO Prototype Tablet PC」としながら、 まだ試作段階だけれどもこれは全てVAIO㈱のチャレンジだと。開発の段階でプロのクリエイターや今回のように見てもらい、皆の声を聞いて、最終的な商品化を目指していきたいと。
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●プロのクリエイターの道具として使えるかを御園生氏が語る。
引き続いて、フォトグラファー/レタッチャー御園生氏の「VAIO Prototype Tablet PC」を実際に使いながら、その手元を4Kハンディカムで映し出しながらのデモンストレーション。
撮影現場でたくさん写真を撮影した画像を「VAIO Prototype Tablet PC」に転送して、必要な画像だけを選定、ピックアップした画像をPhotoshopで呼び出してレタッチしていく。その作業の様子はとてもスムーズで、マウスの使えないような場所でもペンタブレットで操作で、しかもサクサクと動作する。
Photoshopでは、”自動処理”のような負荷のかかる作業は、なかなかタブレットPCでは思うように動いてくれない中、「VAIO Prototype Tablet PC」のパフォーマンスをもってするとストレスなく快適に動作してくれる。
他、撮影して転送した画像をそのままクラウド(Dropbox)にアップロードできる連動性だとかフォルダの変更といった自由度が高いのもWindowsで、ここはiOSやAndroidでは満足できない作業になるという。
プロ作業として、お客さんに正確な色で届けないといけないというハードルをクリアする叶うディスプレイを持つタブレットも非常に少ないのが現状という。
その中でも、「VAIO Prototype Tablet PC」のAdobe RGB 95%以上、250dpiというディスプレイの表示能力と、IPS液晶のおかげで視野角が広く、お客さんと隣同士で打ち合わせや確認する場合でも、きちんと同じ色の認識で共有できる。そして、キャリブレーションをとって調整をして印刷屋さんにも自信をもって納品できる。
モニターが信用ができてスペックが十分ある事で、納品すべきクオリティをコレ1台で作ることができるとなると、今までのように仕事場でしかできなかった作業という制限がなくなるので、仮に、休みに旅行に出かけていたとしても、仕事の移動中でも、カフェにいても、どこでも高いクオリティで仕事が出来る。
そんな自由を叶える唯一のタブレットPCとして非常に期待の持てるマシンだと締めくくった。
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なぜ、VAIO Tap 11と同じ形状を採用したのか、なぜAdobeMAXを初の会場に選んだのか、なぜハイスペックを搭載するのか、ただweb画像から最初に得た情報だけではわからなかったVAIO開発陣の意図をこうして知る事ができると、今までに見えなかったものが見えてくる。
そして、このトークショーの後のタッチアンドトライで、「VAIO Prototype Tablet PC」を実際に触らせてもらうと、その認識が感動に変わる。
次は、リミッターを外した状態で、自分の欲求と感情のままに「VAIO Prototype Tablet PC」へ抱いたこれからのVAIOの希望について語ってみよう。
・「VAIO Prototype Tablet PC」、ソニーストア大阪トークショーレポート(後編)
へ続く。
・「VAIO Prototype Tablet PC」トークショーに行ってきたけど、ブログ記事間に合わなくて間に合わせの感想だよ。
・VAIO製VAIO試作モデル、「VAIO Prototype Tablet PC」がAdobe MAXでついに姿を現す。
「VAIO Prototype Tablet PC」
・パーソナルコンピューターVAIO(VAIO株式会社製)
・発表されたIntelの新CPU“Core M”シリーズのスペックを見ながら、勝手に期待と妄想が膨らむまだ見ぬVAIO。